北東亜細亜共同体論
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無錫白 (2021.08.01)
無錫白 ・・・ 中川光弘(茨城大学名誉教授)
梅雨から初夏にかけては早朝よく近くの霞ヶ浦総合公園に出かけている。土浦市のこの総合公園内には蓮園が有り、この時期毎日色々な品種の蓮が花を咲かせている。蓮は紅蓮と白蓮に大きく分かれるが、白蓮の中で早くから花を咲かせる品種に「無錫白」(むしゃくしろ)がある。中国江蘇州無錫市原産の白蓮で、無垢な純白の花を咲かせている。日の出とともに蕾が開き始め、徐々に時間をかけて開花し、夜にはまた蕾を閉じる。開花した白蓮には何処からか蜂たちがやって来てきて、蜜を集めるとともに蓮の受粉を助けている。このようにして生命はつながっていく。
この蓮園には、他に遼寧省普蘭店市出土の「中国古代蓮」や湖北省武漢市原産の「風涼月」、「艶陽天」なども咲いている。蓮を介した日中友好の長い歴史を感じさせる。
中国、韓国、ベトナムなどのアジア諸国には、蓮を愛でる文化がある。アジアでは、蓮は人間の霊性、スピリチュアリティの開花を象徴する花として尊重されてきた。汚泥の中から無垢な花を咲かせるその姿は、煩悩即菩提を象徴している。雨露を集めて水玉とし、さらりとそれを流し去る蓮の葉は、我執を離れた無心の境地を象徴しているとみなされてきた。このような蓮の姿を愛でる文化はアジア諸国に通底している。これからもこのようなアジア共通の園芸文化を大切にしていきたいものである。(2021.07.28)
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