ロシア経済の変貌
先日の2月7日、ロシア連邦国家統計局が2024年のGDP成長率を発表した。それによれば、対前年比で4.1%だった。もちろんプラスである。
これは、先進国といわれる資本主義国の、どこよりも大きいものである。
これをみた嫌露派の、いわゆる識者は残念がっているだろう。彼らの希望的な予想から、大きく上方へ外れたからである。彼らのなかには、マイナス成長を予想した人も少なくなかった。
ここで筆者が言いたいことは、ロシア経済の隠された変貌である。それを隠しているのは、日本や米欧の資本主義国の、いわゆる識者たちである。
そして、それを暴いている佐藤 優氏の、半年前の現地調査を紹介したい。佐藤氏は、宗教学者であり、作家である。元外交官でもある。
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はじめに、ロシアの2024年のGDP成長率を、やや詳しく見てみよう。ロシア連邦国家統計局が発表したものである。
この図で示したように、GDP全体では4.1%の成長率である。その内訳を需要項目別にみると、家計の最終消費支出は5.5%である。また、業種別にみると、宿泊・飲食サービス業は9.6%である。もちろん、すべてプラスである。
これについて、これは、戦時経済になっているからだ、という解釈があるだろう。これは否定できない。だが、それだけではないだろう。
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佐藤氏は、何といっているか。これは、ロシア経済の根本的な変質であり、活況だという。そして、それを起因とする、ロシアの人心の安定と、社会の変貌だ、という。
同氏は、約半年前の昨年夏に、首都モスクワへ行き、街の様子を伝えている。それを、箇条書きにしよう。以下の通りである。
この2つは、カネで計った利益だけを、最大限に追求するという市場原理主義の否定であり、それを基本原理とする資本主義の否定だろう。
この3つは、市場原理主義を基本にした資本主義を否定することで得られた、人びとの心の安らぎだろう。
この3つは、市場原理主義の悪弊を基本にした資本主義を、徹底的に排除したことによる、社会の変貌だろう。
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こうした変貌は、おぞましい西欧文明への痛烈な批判だろう。
そして、積年のNATO東漸、つまり、軍事力で脅しながらの西欧文明の東方漸進、に対する防衛戦に成功している中で、高らかに歌い上げている凱歌だろう。
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佐藤氏が強調したいことは、これらの事実を直視せよ、ということのようだ。その上で自由に解釈し、評価すればいい、ということである。
同感である。これこそが、学者の姿勢であり、識者の責務である。
. (2025.02.25 JAcom から転載)